第28回(2021年(令和3年)3月14日実施)建設業経理士試験 2級 第1問・第2問の解答速報・解説
今回は2021年3月14日に実施された第28回建設業経理士試験の2級試験の第1問・第2問の解答・解説を作成してみました。
解答
第1問(20点)
第2問(12点)
解説
第1問(20点)
(1)G 工事未払金 3,000,000/B 当座預金 1,800,000
/C 当座借越 1,200,000
まず預金残高(¥1,800,000)から支払い、残高が不足している3,000,000ー1,800,000=1,200,000は、"二勘定制"を採用しているため「当座借越」として負債計上します。
(2)A 現金 4,996,500/D 完成工事未収入金 5,000,000
W 売上割引 3,500/
決済日より早く支払われたことによる"割引"は、(利息的な性格のため)値引き等ではなく「売上割引」(営業外費用)の勘定を使用することに注意しましょう。
また、3級内容ですが、小切手の受取時の勘定は「現金」になります。
(3)F 有価証券 4,812,000/B 当座預金 4,812,000
@600×8,000株+12,000=4,812,000
「有価証券購入時の手数料」は「有価証券」の取得価額に含めて計上します。
(4)T のれん償却費 100,000/K のれん 100,000
会計基準が定める"のれん償却の最長期間"は20年です。
(5)D 工事未収入金 10,000,000/A 完成工事高 10,000,000
S 完成工事原価 8,500,000/U 未成工事支出金 8,500,000
当期から工事進行基準を適用するので、当期に2期分(前期・当期)の収益・費用を計上することになります。
完成工事高:25,000,000×(2,000,000+6,500,000)/21,250,000(=40%)=10,000,000
完成工事原価:2,000,000+6,500,000=8,500,000
第2問(12点)
(1)¥ 5,250
(154,500+25,750)×3/103=5,250
❶期末棚卸資産のうち本店仕入分のみに内部利益が含まれていること、❷問題文に記載されている金額は内部利益加算後の金額であることに注意しましょう。3%加算されているので3/103を乗じることで内部利益部分のみの金額を算出できます。
「3/103が少しわかりにくい方」は、①一度1.03(103%)で割り戻して原価の金額を出してから、②3%を乗じて内部利益金額を算出。と段階的に計算すると理解しやすいかもしれません。
①(154,500+25,750)÷1.03=175,000(内部利益を加算する前の材料費の原価額)
②175,000×3%(0.03)=5,250(本店が加算した内部利益の金額)
154,500+25,750=180,250 ①175,000+②5,250=180,250 と検算することも可能です。
(2)6年
『総合償却の(加重平均法で計算した)平均耐用年数』は
① 各固定資産の要償却額(取得原価ー残存価額)の合計額(要償却総額)を計算し、
② 各固定資産の1年分の償却額の合計額(年償却額合計)を計算し、
③ ①要償却総額÷②年償却額合計(1年未満切捨)
で計算する。
①:要償却総額
機械装置A:1,500,000ー0=1,500,000
機械装置B:5,800,000ー0=5,800,000
機械装置C: 600,000ー0= 600,000
計 7,900,000
②:年償却額合計
機械装置A:1,500,000÷5年= 300,000
機械装置B:5,800,000÷8年= 725,000
機械装置C: 600,000÷3年= 200,000
計 1,225,000
③:平均耐用年数
7,900,000÷1,225,000=6.4489… → 6年(1年未満切捨)
「総合償却」は日商簿記では1級範囲ですが、業種の特性上、建設業経理士では2級範囲になっています。知識があいまいだった方は、端数が生じたことで焦った方もいたかもしれません。建設業経理士試験では「総合償却」は定期的に出題される論点ですので、知らなかった方・知識があいまいだった方は今回でおさえておきましょう。
また、「平均耐用年数の計算方法」は2種類あり、基本的に「加重平均法」で計算しますが、単純に耐用年数を合計して固定資産の数で割る「単純平均法」も存在するので、頭の片隅に入れておきましょう。
(3)¥ 2,390,000
2,530,000ー863,000+723,000=2,390,000
計算式がパッと出ない場合はT勘定を下書きして計算しましょう。
問題で求められているのは「当月の労務費」なので当月の1日~末日までの労務費が求められています。
いらない前月未払分を引いて、当月未払分を足しましょう。
参考:「所得税と社会保険料の金額」は今回の計算には使用しない金額であることに注意してください。
(「賃金支給総額」ではなく、「現金支給額」が与えられた場合は、所得税と社会保険料の金額を足して「賃金支給総額」を計算してから期間調整することになります。)
(4)¥ 1,030,800
当社:964,000+①28,000+③34,000+④4,800=1,030,800
銀行:1,042,800ー②=1,030,800
この問題は落ち着いて「銀行勘定調整表」の下書きを書いて確実に解答するのが良いかもしれません。
「④の未渡小切手」は、減額記帳しているにもかかわらず、期末時点でまだ自分の手元にあるので、減額記帳を削除するため当社の残高にプラスしないといけません。
「現金」でも同じですよね。相手に渡すつもりで封筒に入れ減額記帳していても渡しそびれて期末になった場合、減らした分プラスしないと期末の現金残高が合わなくなります。
終わりに
今回の第1問、第2問ともに例年通りの難易度だったのではないでしょうか。(ただし、ラッキー回のような簡単な難易度ではなかったと思われます。)
「第1問」は簿記の基本的知識をちゃんと覚えているかを問う問題が多かったです。
知識があいまいだった方は、この機会に再確認しておきましょう。
ただし、(5)は少しイレギュラーな問題ですので落としても仕方ないですし、他の問題でも知識があいまいで落とした方もいらっしゃるでしょう。それでも最低3問は死守しましょう。
「第2問」は少しミスを誘う問題や端数が出る問題がありましたが、落ち着いて丁寧に考えれば解ける問題が多かったでしょう。
通常の簿記に比べ、「工事進行基準」や「総合償却」は建設業経理士試験でよく問われるところですので、ここでおさえておきましょう。
また「のれん償却の最長期間」「未渡小切手」は他の会計系の資格試験でも頻出論点ですので必ず覚えておきましょう。
次回は第3問と第4問をアップする予定です。
➤第3問・第4問の解説をアップしました。
➤第28回建設業経理士試験 2級 解答・解説 -まとめ-の記事へのリンク
第28回建設業経理士試験の問題と解答用紙は主催機関である「一般財団法人 建設業振興基金」のホームページにアップされています。
(建設業振興基金ホームページの過去の試験問題のページ)
https://www.keiri-kentei.jp/exam/past/
※このページの解答・解説は会計知識向上のため当ブログ独自の見解・考え方をメモ・記録したものであり、
専門学校などの専門家の組織体のような素晴らしく完璧な解答・解説ではございません。
また、解答・解説・主催機関の見解・結果等を保証するものでもございません。
解答や解説に誤り等があっても当方では一切の責任を負いませんので、その点をご留意・ご了承のうえ、
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記載等に問題があった場合など記事を削除することもございます。
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